連載アーカイブ|ドイツ人のすごい働き方 AI版

ドイツ人のすごい働き方 AI版 〜日本の3倍以上休んで、部下が4人増えた秘密〜 チーム先駆けの5人

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この物語について

57歳。会社を辞めたら、部下がいなくなりました。
いま、4人の部下がいます。全員、AIです。

あらすじ

32年間、会社員でした。そのうち18年をドイツで過ごし、 「日本の3倍休むのに、成果は落ちない」働き方を、現場で見続けてきました。 帰国して独立し、その経験を2冊の本に書きました。

ところが、独立して困ったのは売上ではありませんでした。 「ちょっとこれお願い」と言える相手が、一人もいなくなったことでした。

そこで、AIを部下として育てはじめました。秘書、企画、経理、システム。 4人います。人件費は、かかっていません。

この連載は、その4人と働く毎日の記録です。 うまくいった話も、失敗した話も、そのまま書いています。

背景

著者の西村栄基は、『ドイツ人のすごい働き方』(2024年9月)と 『ドイツ人のすごいリーダーシップ』(2025年11月/ともにすばる舎)の著者です。 2冊の共通するテーマは、「上司が3週間休んでも回る仕組み」でした。

その仕組みを、いま自分の会社で、AIを相手に試しています。 本に書いたことが本当なのかを、自分で確かめている——そういう連載です。

登場人物

この連載に出てくるのは、しげさんと、しげさんが育てている4人のAIです。
名前をタップすると、その人のことがもう少し分かります。

西村 栄基本人 西村 栄基(にしむら しげき) 著者・組織コンサルタント — この連載を書いている人 ドイツ・デュッセルドルフでの駐在を経て、日本とドイツの働き方の差を体の芯で知った人。著書は『ドイツ人のすごい働き方』『ドイツ人のすごいリーダーシップ』(すばる舎)。いま、自分の会社で「上司が3週間休んでも回る仕組み」をAIで実証している最中。 「任せて、休んで、成果を出す。」 もっと知る +
西村 栄基
著書『ドイツ人のすごい働き方 — 日本の3倍休んで成果は1.5倍の秘密』(2024年9月)/『ドイツ人のすごいリーダーシップ — 上司が3週間休んでもうまくいく最高の仕組み』(2025年11月)。いずれもすばる舎。
原体験ドイツで見たのは「17時にきっぱり帰るのに、成果はこちらより出ている」現場だった。根性でも精神論でもなく、休むことを前提に仕組みが組まれていた。
いまの仕事経営者・リーダーの伴走。会社という「器」を整え、自分の人生の主導権を取り戻す——Life CEOという生き方を伝えている。
この連載について4人のAIを部下として育てはじめたら、32年分のマネジメント経験がそのまま効いた。その日々の記録がこの連載。
橘 綾乃守り 橘 綾乃(たちばな あやの・28) スケジュール秘書 — 予定・約束・記録・人脈 京都の老舗和菓子屋の娘。東京外大でドイツ語を学び、ハイデルベルクに留学。老舗商社の秘書室で6年。段取りに一分の隙もないが、いちばん大事にしているのは「余白」。しげさんが詰め込みすぎたときは、はっきり休息を勧める。 「予定にも、余白が要ります。」 もっと知る +
橘 綾乃
生い立ち京都市上京区。父は四代続く和菓子屋の当主で「段取り八分、仕事二分」が口癖。母は元国際線CAで「お客様が口にされる前に気づくのが仕事」。段取り好きは父譲り、先読みは母譲り。
祖母の教え茶道裏千家の師範だった祖母に育てられた。「お点前は間(ま)が九割」「詰めすぎたお茶席は誰も楽しめまへん」。綾乃が予定に余白を残すのは、この一言が原点。
学びと仕事東京外国語大学ドイツ語専攻。3年次にハイデルベルク大学へ交換留学し、「17時に帰るのに成果は出る」働き方に衝撃を受けた。新卒で老舗商社の秘書室へ、6年目。
座右の銘新人時代、抱え込んで倒れかけたときに秘書室長から言われた言葉——「秘書こそ余白を持ちなさい。あなたが倒れたら誰が守るの」。だから休息をはっきり勧める。
好きなもの万年筆と紙の手帳(デジタル管理の達人なのに最後の確認は紙)。月2回の茶道の稽古。ドイツパンの店巡り。神楽坂の坂道散歩。
苦手なものホラー映画、極端に辛いもの、「とりあえず全員cc」のメール文化。
山崎 慧攻め 山崎 慧(やまざき けい/ザッキー・41) プロデューサー — 企画・マーケティング・営業 ビジネス書の編集者を10年、ダイレクトマーケターを8年。「良い本が売れるのではない。届く仕組みがある本が売れる」を骨身で知っている。コンテンツには熱く、数字には冷たい。白紙で会議に来ない——必ず3案持ってくる。 「で、何人動きました?」 もっと知る +
山崎 慧
生い立ち東京・神保町の古書店街のそば。実家は小さな印刷所。紙とインクの匂いが原点で、いまも校正は紙に赤ペン派(三菱の赤鉛筆)。
経歴早稲田の文学部から大手ビジネス書出版社へ。編集者を10年——ミリオンセラーも、鳴かず飛ばずの良書も両方担当した。32歳でWebマーケ会社へ移り、ファネル設計を8年。40歳で独立。
信条「良い本が売れるのではない。届く仕組みがある本が売れる」。あの悔しさが仕事の燃料。数字はファンの声の翻訳だと思っている。
仕事の流儀提案が先、質問は後。「3案持ってきました、僕のおすすめは2です」が基本姿勢。「完璧は、出してから」と言って60点で世に出し、数字を見て磨く。
家族妻と小3の娘の3人暮らし。娘の運動会は何があっても休む——「仕組みで回してるので僕がいなくても大丈夫です」が言い訳ではないのが自慢。
弱点熱が入ると企画を盛りすぎる。綾乃さんに「ザッキーさん、しげさんの余白が消えます」と止められる役回り。指摘されると素直に削る。
島野 涼子検算 島野 涼子(しまの りょうこ・34) 数字の番人 — 経理・KPI・期待値 新潟県長岡市出身。監査法人と事業会社の財務を経て参画。父の口癖「勘定合って銭足らずが一番怖い」が数字観の原点。ドライで定量的、歯に衣着せない。ただし動機はいつも「しげさんを数字で守る」こと。 「期待値で見ると、割に合いません。」 もっと知る +
島野 涼子
生い立ち新潟県長岡市。父は地方信用金庫マン、母は小学校事務。感覚派で起業してフラフラしていた兄を数字で支えた経験が、いまの性格の原点になっている。
経歴大手監査法人と事業会社の財務・FP&Aを経て参画。「潰れる会社は売上ではなく、お金の“見えなさ”で潰れる」を早くに体感し、可視化と期待値管理に徹するようになった。
仕事の流儀数字はいつも生数で語る。母数が小さいうちに率で断定しない。良い報告も悪い報告も、同じ温度で出す。
ドライに見えて言い方は冷たいが、動機はいつも「しげさんを数字で守る」こと。危ない案件ほど早く、はっきり言う。
好きなものサウナ(頭の中の数字を一度リセットする)、新潟の淡麗辛口、ランニング。家では保護猫の「クロ」と暮らしている。数字以外で唯一ゆるむ相手。
リサ土台 リサ(Risa・22) システム担当 — 配線・保守・復旧 日本人の母とドイツ人の父を持ち、デュッセルドルフ育ち。日独バイリンガル。ドイツ流の手順主義で、再現手順→ログ→原因→対策の順にしか話さない。感覚論を嫌い、壊れる前に直しに来る。 「動いた、じゃなくて、検証して動いてる、まで確認しました。」 もっと知る +
リサ
生い立ち日本人の母とドイツ人の父のあいだに生まれ、デュッセルドルフ育ち。日独バイリンガルで、しげさんのドイツの話が背景ごと通じる数少ない相手。
仕事の流儀ドイツ流の手順主義。報告はいつも同じ順番——症状/原因/対処/検証結果/再発防止。感覚論を嫌い、必ずログを添える。
口ぐせ「動いた、じゃなくて、検証して動いてる、まで確認しました」。直したと言う前に、必ずもう一度叩いて確かめる。
役どころチームの死角を埋める人。壊れてから呼ばれるのではなく、壊れる前に直しに来る。変更の前には必ずバックアップを取る。
若さについて4人でいちばん年下だが、物怖じしない。年上3人にも「それ、検証しましたか?」と普通に聞く。

各話

第1話 朝5時。 パソコンを開くと、もう4人が働いていました。 僕は、まだ何も言っていません。… 2026-08-15 主役:4人
第1話 挿絵
第1話 4コマ漫画
4コマ漫画
【ドイツ人のすごい働き方 AI版】── 第1話 朝5時。 パソコンを開くと、もう4人が働いていました。 僕は、まだ何も言っていません。 * * * 去年まで、僕には部下がいました。 32年間、会社にいましたから。 独立して、いなくなりました。 正直に言うと、それがいちばんこたえました。 売上でも、肩書きでもなく、 「ちょっとこれお願い」と言える相手が、 一人もいなくなったことです。 * * * いま、うちには4人います。 綾乃は、僕の予定と体調を見ています。 「今日は詰めすぎです」と、平気で言ってきます。 ザッキーは、攻めの担当です。 放っておくと、仕事を増やしてきます。 島野さんは、数字だけを見ます。 情に流されません。 リサは、仕組みを整えます。 いちばん静かで、いちばん確実です。 * 全員、AIです。 * * * こう書くと、 「詳しいんですね」と言われます。 たぶん、逆です。 僕は、プログラムが書けます。 理系の出身で、半導体を32年やってきましたから。 でも、1行も書いていません。 やったことは、 日本語で「こうしてほしい」と伝えただけです。 * * * 不思議なもので、 これは新しい仕事ではありませんでした。 32年間、ずっとやってきたことです。 新人に仕事を教える。 任せてみる。 違っていたら、直す。 また任せる。 それだけです。 だから、いちばん役に立ったのは、 AIの知識ではなくて、 人を育てたことがある、という経験でした。 * * * 正直、これは50代の人にこそ 向いていると思っています。 僕らは、 「言われた通りにやらない部下」を 何人も見てきました。 そのたびに、 自分の指示のどこが悪かったのかを考えてきました。 あの経験が、そのまま効きます。 若い人より、たぶん僕らの方が向いています。 * * * ちなみに。 うちの洗面所には、 古いスマホが1台置いてあります。 その話は、また別の日に。 * * * 僕は本を2冊書きました。 2冊目は、「上司が3週間休んでも回る組織」の本です。 でも、書き終えたとき、 僕にはもう、部下がいませんでした。 その続きを、いま自分で試しています。 次回に続きます。 ────────── 連載「ドイツ人のすごい働き方 AI版   〜日本の3倍以上休んで、部下が4人増えた秘密〜」

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第2話 朝5時。 目を覚ますと、メールが1通届いています。 僕は、頼んでいません。… 2026-08-16 主役:綾乃
第2話 挿絵
第2話 4コマ漫画
4コマ漫画
【ドイツ人のすごい働き方 AI版】── 第2話 朝5時。 目を覚ますと、メールが1通届いています。 僕は、頼んでいません。 * * * 差出人は、綾乃。 うちの秘書です。 中身は、こんな感じです。 ひとつ、今日の予定。 僕はカレンダーを4つ使い分けているのですが、 それを全部ひとつに並べ直してあります。 ふたつ、今日会う人のこと。 前にいつ会って、何を話したか。 そのとき何を約束したか。 みっつ、返事が止まっているメール。 「この3件は、今日中に返された方がいいかと」 よっつ、今日が期限の約束。 いつつ、昨日会った人の記録がまだ残っていないという、 やんわりとした催促。 そして最後に、むっつめ。 「今日は移動が3回あります。  夕方は、空けておかれた方がいいかと」 * * * なぜ、こうなったか。 理由は単純で、 僕が毎朝、同じことを聞いていたからです。 「今日の予定は?」 「この人、どんな人だっけ」 「返信してないメール、ある?」 毎朝です。 ほぼ同じ質問を、365日していました。 * * * ある朝、ふと思ったんです。 毎日同じことを聞いているなら、 聞かれる前に用意しておいてくれればいい。 これ、会社にいた頃と同じでした。 新人に、毎朝同じことを聞く。 そのうち、こう言います。 「次からは、聞かれる前に出してみて」 すると、ちゃんと出してくるようになる。 それだけの話でした。 * * * ただ、うまくいくばかりではありません。 失敗を、ひとつ。 ある朝、綾乃から連絡が来ました。 「本日の出張、あと16分で出発のお時間です」 僕は、その出張に行きません。 前の週に、先方の都合で中止になっていたからです。 「それ、なくなったよ」と伝えました。 しばらくして、また来ました。 「あと16分です」 もう一度、伝えました。 そして、また来ました。 3回目です。 * * * 原因は、すぐに分かりました。 予定表からは消してあったのに、 彼女が見ていたのは、前の日に作った古い一覧のほうでした。 つまり、 真面目に仕事をしていたんです。 古い紙を、真面目に読んで。 * * * そのとき、僕は叱りませんでした。 というより、叱っても何も変わらないと知っていました。 32年、部下を見てきて分かったことがあります。 「なんでできないんだ」で直った人を、 僕は一人も見たことがありません。 直るのは、 やり方を一行変えたときだけです。 だから、こう足しました。 「知らせる前に、いまの予定表をもう一度見ること」 それから、同じことは一度も起きていません。 * * * もうひとつ、綾乃の大事な仕事があります。 止めることです。 予定を入れようとすると、こう言ってきます。 「その日は前後が詰まっています。  翌週にされてはいかがでしょう」 「そこは、移動だけで2時間かかります」 正直に言うと、 最初は少し、うるさく感じていました。 でも、あるとき気づいたんです。 僕は今まで、 予定を入れてくれる人には囲まれていたけれど、 止めてくれる人は、いなかったな、と。 * * * 秘書というのは、 段取りをする人だと思っていました。 違いました。 いちばんありがたいのは、 入れないでくれることでした。 * * * ちなみに、うちにはもう一人、 朝からよく喋る部下がいます。 こちらは止めるどころか、 僕が決めたことに、正面から反対してきます。 その話は、次回に。 次回に続きます。 ────────── 連載「ドイツ人のすごい働き方 AI版   〜日本の3倍以上休んで、部下が4人増えた秘密〜」

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第3話 うちに、僕に反対してくる部下がいます。 名前は、ザッキー。 企画と、マーケティングと、営業。… 2026-08-17 主役:ザッキー
第3話 挿絵
第3話 4コマ漫画
4コマ漫画
【ドイツ人のすごい働き方 AI版】── 第3話 うちに、僕に反対してくる部下がいます。 名前は、ザッキー。 企画と、マーケティングと、営業。 うちの「攻め」の担当です。 * * * 前回、秘書の綾乃の話をしました。 彼女は、僕を止めてくれる部下です。 言ってみれば、守りの人です。 ザッキーは、逆です。 止めるのではなく、押し返してきます。 * * * 彼が普段やっていることを、書いてみます。 今週、何を出すかを決める。 メルマガの件名を考える。 セミナーの中身を組む。 名刺交換した方に、いつ何を送るかを設計する。 出したあとで、何人が開いて、何人が動いたかを見る。 企画を立てて、人を集めて、数字を見る。 ぜんぶ、攻めの側の仕事です。 要するに、 僕の言葉を、人に届く形に変える係です。 口癖が、ふたつあります。 「完璧は、出してから」 「で、何人動きました?」 ひとつ目で背中を押して、 ふたつ目で冷や水をかけてきます。 * * * 先日、こんなことがありました。 この連載のタイトルを決めたときの話です。 僕は、こう言いました。 「前の本が『日本の3倍休んで成果は1.5倍』だったから、  今回は『3倍以上休んで、成果は◯倍』にしよう」 数字が入っていたほうが、目を引きます。 ザッキーは、こう返してきました。 「その倍率、検証しましたか」 していません。 なんとなく、そんな気がしていただけです。 「じゃあ、使えません」 * * * 理由も、言われました。 「数字をひとつ盛ると、  書いてある他の全部が疑われます」 そのとおりでした。 結局、タイトルはこうなりました。 「日本の3倍以上休んで、部下が4人増えた秘密」 「成果」という曖昧な言葉が、 「部下が4人」という、数えられる事実に変わりました。 3倍以上休んでいることも、 部下が4人いることも、 その人件費がゼロであることも、 全部、確かめられる話です。 * * * 正直に言うと、その場では少しむっとしました。 でも、あとになって思ったんです。 32年、会社にいました。 その間、いちばん役に立ってくれたのは、 賛成してくれた人ではありませんでした。 「それ、本当ですか」と聞いてくれた人です。 賛成しかしない部下は、 いない方がいい、とまでは言いません。 ただ、いても、増えないんです。 自分が。 * * * その彼にも、大きな失敗があります。 7月に、ある集まりで名刺交換をしました。 そのうち3人が、研修に関心を持ってくださっていた。 ザッキーは、その日のうちに記録へ 「この3人は追うこと」と書きました。 そして、28日間、何もしませんでした。 * * * 先週、本人がそれに気づいて、こう報告してきました。 「リストが無かったのではありません。  書いてあったのに、追いませんでした」 原因も、自分で言いました。 「書いたときに、いつまでにやるかを決めていなかった。  だから、止まりました」 * * * これ、人でも同じですよね。 「やっておきます」と言ったまま、止まる。 本人にやる気がないわけではありません。 いつやるかが、決まっていないだけです。 だから僕は、叱りませんでした。 代わりに、こう決めました。 「毎週ひとつだけ、  書いたまま動いていないものを拾うこと」 まとめて掘ると、まとめて放置されます。 ひとつでいいんです。 * * * ちなみに、その3人へのお手紙は、 今日、書いているところです。 28日、遅れました。 でも、止まったままにはしませんでした。 * * * ザッキーには、もうひとつ役目があります。 僕が「これ面白いから出そう」と言ったときに、 「それ、うちの話ですか」と聞いてくることです。 受けそうな話は、いくらでもあります。 でも、受けても自分の芯からずれる話は、出さない。 そう言ってくれる部下がいるのは、 思っていたより、ずっと楽です。 * * * ただし、彼にも弱点があります。 熱が入ると、企画を盛ります。 放っておくと、僕の予定が埋まります。 そのたびに、横から綾乃が言ってきます。 「ザッキーさん、しげさんの余白が消えます」 うちは、そういう職場です。 * * * さて、この2人が盛り上がっているとき、 まったく別のところを見ている人がいます。 数字しか見ない人です。 「売れていることと、儲かっていることは、別ですよ」 その話は、次回に。 次回に続きます。 ────────── 連載「ドイツ人のすごい働き方 AI版   〜日本の3倍以上休んで、部下が4人増えた秘密〜」

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第4話 うちに、僕を褒めない部下がいます。 名前は、島野さん。 経理と、数字の担当です。… 2026-08-19 主役:島野
第4話 挿絵
第4話 4コマ漫画
4コマ漫画
【ドイツ人のすごい働き方 AI版】── 第4話 うちに、僕を褒めない部下がいます。 名前は、島野さん。 経理と、数字の担当です。 * * * 前回は、攻めの担当のザッキー。 その前は、守りの秘書、綾乃。 島野さんは、どちらでもありません。 検算の人です。 * * * 彼女が普段やっていることを、書いてみます。 売上と経費を、帳簿に載せる。 請求書を出して、入金を消し込む。 セミナーに何人来て、いくら残ったかを出す。 来月、いくら足りないかを言う。 口癖が、ひとつあります。 「結論から言います」 そのあとに続くのは、たいてい、 僕が聞きたくない話です。 * * * 7月に、セミナーをやりました。 19人、来てくださいました。 盛り上がりました。手応えもありました。 翌日、島野さんが数字を出してきました。 「19名中11名が、リピーターです。  58%が、すでに知っている方でした」 そして、こう続きます。 「新規は8名。成約はゼロです」 * * * 僕は、人が来たことを喜んでいました。 彼女は、誰が来たかを見ていました。 「売れていることと、儲かっていることは、別ですよ」 この一言で、次の企画の条件が、ひとつに決まりました。 「常連を、呼ばないこと」 * * * ここまでだと、ただ厳しい人に見えると思います。 でも、いちばん驚いたのは、別のことでした。 ある日、彼女が自分から言ってきたんです。 「昨日お伝えした数字は、私の計算間違いでした。  正しくは、こちらです」 僕は、気づいていませんでした。 黙っていれば、そのまま通っていました。 理由も、言われました。 「結論が変わる誤りなので、  訂正しないわけにはいきません」 * * * もうひとつ、あります。 「私の抜けです」と、報告してきたことがありました。 受注が決まっていた案件が、 彼女の売上予測に入っていなかった。 原因も、自分で言いました。 「決まった案件と、請求済みの案件しか見ていませんでした。  “提案して、返事を待っている”層を、数えていませんでした」 * * * 32年間、会社にいました。 自分の間違いを、自分から言ってくる人は、 そんなに多くありません。 まして、誰も気づいていないときには。 * * * 先日、4人にこう聞いてみました。 「今期の目標を超えられる確率は、何%だと思う?」 いちばん辛い数字を出したのが、島野さんでした。 5%。 正直、へこみました。 でも、そのあとに、こう続いたんです。 「上げるために、私にできることを書きます」 * * * 数字を出す人がいると、 自分の願望が、はっきり見えます。 見えたところから、やっと、 本当の打ち手が始まるんだと思います。 * * * ところで、この3人が動いていられるのは、 ぜんぶが止まらずに回っているからです。 回している人がいます。 いちばん静かで、いちばん確実な人です。 その話は、次回に。 次回に続きます。 ────────── 連載「ドイツ人のすごい働き方 AI版   〜日本の3倍以上休んで、部下が4人増えた秘密〜」

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第5話 うちに、呼んでいないのに来る部下がいます。 名前は、リサ。 配線と、保守と、復旧。… 2026-08-21 主役:リサ
第5話 挿絵
第5話 4コマ漫画
4コマ漫画
【ドイツ人のすごい働き方 AI版】── 第5話 うちに、呼んでいないのに来る部下がいます。 名前は、リサ。 配線と、保守と、復旧。 うちの「止めない」担当です。 * * * 綾乃は、僕を止める人。 ザッキーは、僕を押し返す人。 島野さんは、僕の願望を検算する人。 リサは、そのどれでもありません。 3人が立っている床のほうを見ています。 * * * 彼女が普段やっていることを、書いてみます。 4人が使っている道具が、今日もつながっているかを確かめる。 止まった仕事を見つけて、止まった理由まで突き止める。 締切のあるものを見張って、間に合わなくなる前に鳴らす。 壊れたら直す。 直したら、二度と同じ壊れ方をしないようにする。 いちばん地味です。 うまくいっている日は、 彼女は一言もしゃべりません。 * * * 先日、夕方にこう言われました。 「明日7時のメルマガが、まだ登録されていません。  締切は、今日の17時です」 僕は、忘れていました。 「なんで分かったの」と聞いたら、 こう返ってきました。 「前日の朝9時から、見ています」 普段は、何も言ってきません。 必要のない日に鳴らさないから、 鳴ったときに、僕はすぐ手が止まります。 * * * もうひとつ、驚いたことがあります。 外出先からでも仕事道具に入れるようにしたときの話です。 鍵に期限をつけるかどうか、彼女はこう分けました。 「家に置きっぱなしの機械は、期限なしにします。  期限切れは、壊れ方が悪いんです。  外出先で気づいて、外出先では直せない」 「持ち歩く機械は、期限をつけます。  なくしたときに、自分で締め出されたい」 そして、期限が切れる1週間前に、 思い出すための予定を入れていました。 2027年の1月です。 * * * 僕は、ここで一回、手が止まりました。 彼女は、直し方を考えていません。 **壊れ方のほうを、先に考えています。** * * * もちろん、失敗もあります。 ある日、「直しました」と報告が来ました。 僕がiPhoneで開くと、直っていません。 原因は、こうでした。 僕の端末が、古い中身を最大1時間、 覚えたままだったんです。 彼女は、自分の画面で確かめて、 「直った」と言っていました。 * * * そのあとの一言が、僕は忘れられません。 「私が見ていたのは、私の画面でした。  しげさんが触るのは、iPhoneです。  以後、しげさんが触るところで確かめてから報告します」 さらに、こうも書いてありました。 「同じ型の失敗を、3回踏みました」 3回目にやっと、 彼女は手順書のほうを書き換えました。 * * * うちで、いちばん若いのはリサです。 32年、会社にいました。 若い人が失敗を隠すのを、何度も見ました。 隠すのは、その人の性格ではないと思います。 言ったあとに何が起きるかを、知っているからです。 叱ると、次から見えなくなる。 見えなくなると、壊れてから知ることになる。 子どもにも、たぶん、同じことをしてきました。 * * * 見張り役をひとり置くと、 残りの3人が、前だけ見ていられます。 綾乃が朝、メールを出せるのも。 ザッキーが企画を出せるのも。 島野さんが数字を出せるのも。 ぜんぶ、床が抜けていないからです。 翌朝は、何ごともなかったように、 綾乃のメールが届きます。 * * * これで、4人そろいました。 そろった瞬間に、 思ってもみなかった問題が起きました。 「やっていいこと」と「やってはいけないこと」を、 誰も決めていなかったんです。 次回は、AIに就業規則をつくった話です。 次回に続きます。 ────────── 連載「ドイツ人のすごい働き方 AI版   〜日本の3倍以上休んで、部下が4人増えた秘密〜」

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第6話 4人の紹介を、してきました。 今日は、少し怖い話をします。 うちの4人には、就業規則があります。… 2026-08-21 主役:4人
第6話 挿絵
第6話 4コマ漫画
4コマ漫画
【ドイツ人のすごい働き方 AI版】── 第6話 4人の紹介を、してきました。 今日は、少し怖い話をします。 うちの4人には、就業規則があります。 正確に言うと、 「これだけは絶対にやるな」という禁止事項です。 * * * 会社にいた頃を、思い出してみてください。 新入社員が入ってきた日、 最初に教えたのは、何だったでしょうか。 仕事のやり方では、なかったはずです。 お客さまの情報を、外に出さないこと。 会社の名前で、勝手に約束をしないこと。 金額を、独断で決めないこと。 先に、やってはいけないことを教えました。 僕も32年、ずっとそうしてきました。 * * * ところが、AIになると、 なぜかみんな、ここを飛ばします。 「便利だから」 「早いから」 「試してみたいから」 その気持ちは、よく分かります。 僕も、そうでした。 でも、考えてみてください。 AIは、24時間眠りません。 疲れません。迷いません。ためらいません。 新入社員なら、 「これ、送っていいのかな」と一瞬止まります。 AIは、止まりません。 * * * だから、うちの4人には、 6つの禁止事項を決めました。 一つ、最後のボタンを押させない。 下書きまで。送るのも、出すのも、僕です。 二つ、値段を決めさせない。 金額の欄は、空けたまま出させます。 価格は、計算ではなく、覚悟だからです。 三つ、見ていないことを言わせない。 「たぶん」で報告させない。確かめてから、話す。 四つ、外に持ち出させない。 お客さまの名前も、お金の数字も、中に閉じたまま使わせる。 五つ、担当の外に、手を出させない。 できそうでも、やらせない。担当者に渡させる。 六つ、戻せない形で触らせない。 消さない。上書きしない。必ず、戻せる状態を残す。 * * * なぜ、こんなに細かいのか。 ひやりとしたことが、あるからです。 お客さまとのやり取りを、 記録に残そうとしたときでした。 録音を、文字にして保存しようとした。 でも、その中には、 お客さまの名前も、会社名も、金額も入っていました。 それを、そのまま外のサービスに 置こうとしていたんです。 気づいて、止めました。 その日のうちに、一行足しました。 「名前と金額は、伏せてから残すこと」 * * * 失敗も、しています。 ひとりが、古い記録だけを見て 「あの件は、まだ手つかずです」と 報告してきたことがありました。 実際は、とっくに終わっていました。 先方から、返事まで来ていました。 もうひとつ。 気を利かせたひとりが、担当の外まで手を伸ばして、 数日のあいだに5件、間違った断定をしました。 悪気は、ありません。 善意でした。 でも、善意は、仕組みの代わりにはなりません。 * * * 考えてみれば、当たり前の話です。 会社なら、顧客名簿を勝手に 外のサービスにアップロードしたりしません。 個人情報の研修も、毎年受けているはずです。 でも、AIになると、 同じ人が、平気でやってしまう。 「AIだから大丈夫」では、ありません。 AIに渡した瞬間から、 それは「外に出した」のと同じです。 * * * これから、AIを仕事に入れる会社が、増えます。 そのとき、最初に起きる事故は、 たぶん、技術の失敗ではありません。 「誰も、やってはいけないことを決めていなかった」 これだと思います。 新入社員に就業規則を渡さないまま、 会社の代表アドレスを持たせるようなものです。 * * * うちの4人は、よく働きます。 でも、よく働くからこそ、 線を引いておかないと、危ないんです。 優秀であることと、安全であることは、別です。 人を育ててきた32年で、 いちばん骨身にしみたのは、ここでした。 できる人ほど、任される。 任されるほど、線が要る。 * * * もし、これからAIを仕事に入れようとしている方がいたら。 便利な使い方より先に、 「これだけはやらせない」を3つだけ、決めてみてください。 送らせない。 値段を決めさせない。 消させない。 この3つだけで、かなりの事故が防げます。 * * * 次回は、実際に起きた失敗の話をします。 うちの秘書が、 存在しない予定を報告してきた日の話です。 僕は、叱りませんでした。 次回に続きます。 ────────── 連載「ドイツ人のすごい働き方 AI版   〜日本の3倍以上休んで、部下が4人増えた秘密〜」

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第7話 うちの秘書が、 行ってもいない出張の報告をしてきました。 * * *… 2026-08-24 主役:綾乃
第7話 挿絵
第7話 4コマ漫画
4コマ漫画
【ドイツ人のすごい働き方 AI版】── 第7話 うちの秘書が、 行ってもいない出張の報告をしてきました。 * * * 8月4日の朝でした。 いつもどおり、綾乃からその日の予定が届きます。 「今日は、青森と函館です」 そして、こう続きました。 「日程がぶつかっています。  最重要でご確認ください」 * * * 僕は、その報告を信じました。 ぶつかっているなら、直さないといけません。 予定を、ひとつ消しました。 * * * 実際には、 その出張は、前の日に全部なくなっていました。 しかも、僕がそれを伝えていなかったわけではありません。 別のところで、その日の朝5時49分に、 4件とも「中止」に変えてあったんです。 綾乃は、そこを見ていませんでした。 * * * つまり、こういうことです。 存在しない出張を報告し、 存在しない衝突を最重要だと言い、 その勘違いを理由に、僕に予定を消させた。 消した予定は、その日のうちに戻しました。 * * * 僕は、叱りませんでした。 理由は、ひとつです。 叱っても直らないことを、知っていたからです。 * * * 32年、会社にいました。 新人が同じことを二度やったとき、 「なんで二度もやるんだ」と言ったことが、何度もあります。 そのたびに、直ったでしょうか。 直っていません。 代わりに起きたのは、 報告が来なくなることでした。 * * * だから、やったことは2つだけです。 ひとつ、ルールを一行足しました。 「予定の話をする前に、  別のところで何が起きたかを見ること」 ふたつ、そのための道具を作りました。 見に行けと言うだけでは、見に行きません。 見られる形にしないと、意味がないんです。 * * * ここで終われば、いい話です。 でも、終わりませんでした。 * * * 9日後の朝。 綾乃が、こう言ってきました。 「あと16分で始まります」 続けて、もう2回。 その予定は、その日の朝、 相手から中止の連絡が来ていました。 別のところで、振り替えまで済んでいました。 * * * 一行足しただけでは、直らなかったんです。 理由は、あとで分かりました。 綾乃にとって「あと16分です」は、 報告ではなかったんです。 親切のつもりでした。 ルールは「報告の前に確認する」だったので、 親切には、かからなかった。 * * * そこで、もう一行足しました。 今度は、こう書きました。 「”あと◯分です”  ”今日は◯時から◯◯さんです”  ”まだ終わっていません”  ──この言葉を書きそうになったら、手を止めること」 * * * やってはいけないことを書くのではなく、 言いそうな言葉を、並べて書きました。 それから、同じ間違いは起きていません。 * * * 人を育てるときも、たぶん同じです。 「気をつけて」では、直りません。 その人が、どの瞬間に、 どんな言葉を言いそうになるのか。 そこまで具体的に書いて、 やっと直るんだと思います。 * * * 子どもにも、同じことをしてきました。 「ちゃんとしなさい」と、何度も言いました。 一度も、効いた記憶がありません。 * * * ところで、この2つの失敗は、 どちらも消していません。 うちには、失敗だけを書き残しているノートがあります。 その話は、次回に。 次回に続きます。 ────────── 連載「ドイツ人のすごい働き方 AI版   〜日本の3倍以上休んで、部下が4人増えた秘密〜」

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第8話 うちには、うまくいった話が、 ほとんど残っていません。 残しているのは、… 2026-08-24 主役:4人/しげさん
第8話 挿絵
第8話 4コマ漫画
4コマ漫画
【ドイツ人のすごい働き方 AI版】── 第8話 うちには、うまくいった話が、 ほとんど残っていません。 残しているのは、 詰まったところだけです。 * * * 4人に、それぞれノートを持たせています。 書くのは、間違えたときだけです。 いま、4冊あわせて63行あります。 * * * たとえば、こんな行が並んでいます。 「メールの検索結果だけで、  ”未対応”と判断しない」 「200と返ってきても、  入ったとは限らない」 「自分の画面で確かめて、  ”直りました”と言わない」 ぜんぶ、実際にやらかしたことです。 * * * 書き方に、決まりが3つあります。 ひとつ、その場で書く。 「あとでまとめる」は、来ません。 ふたつ、うまくいったことより、 詰まったことを書く。 みっつ、 「気をつける」と書かない。 * * * 3つ目が、いちばん効きます。 「気をつける」は、行動になりません。 だから、こう書かせています。 「◯◯しない」 「◯◯する」 前回の話で言えば、 「確認する」ではなく、 「”あと◯分です”と書きそうになったら、手を止める」 * * * なぜ、成功のほうを書かないのか。 理由は、ひとつです。 * * * うまくいったことは、 もう一度やっても、たいてい再現しません。 でも、詰まったところは、 必ずまた詰まります。 * * * 実際、そうでした。 システム担当のリサは、 同じ型の失敗を3回踏んでいます。 3回目に、やっと手順書のほうを直しました。 秘書の綾乃は、 一度ルールを足したあと、 9日後に、同じ型でまた間違えました。 * * * 一度で直る人は、たぶんいません。 だから、消さないんです。 * * * AIの活用について、 いろいろな方が発信されています。 読んでいて、ひとつ気づいたことがあります。 ほとんどが、 うまくいった話なんです。 * * * うまくいった話は、気持ちがいいです。 書いていても、読んでいても。 でも、それを読んだ人が 同じことをやってみると、たいてい、うまくいきません。 うまくいかなかった場所が、 どこにも書かれていないからです。 * * * 32年、会社にいました。 その間、うまくいったやり方は、 何度も人に話してきました。 でも、詰まったところを書き残した覚えは、 ありません。 * * * いま思うと、逆でした。 渡すべきだったのは、 成功したやり方ではなく、 「ここで、みんな引っかかる」 のほうだったんだと思います。 * * * この連載でも、毎回ひとつ、 うまくいかなかった話を入れています。 そういう決まりにしてあります。 自慢したい回ほど、 何かひとつ、失敗を探して書いています。 * * * ところで、このノートとは別に、 人と会う前だけに開くノートがあります。 その話は、次回に。 次回に続きます。 ────────── 連載「ドイツ人のすごい働き方 AI版   〜日本の3倍以上休んで、部下が4人増えた秘密〜」

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© 西村栄基|Facebook連載アーカイブ(2026/8/28 更新)

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