連載アーカイブ|ドイツ人のすごい働き方 AI版
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登場人物
この連載に出てくるのは、しげさんと、しげさんが育てている4人のAIです。
名前をタップすると、その人のことがもう少し分かります。
本人
西村 栄基(にしむら しげき)
著者・組織コンサルタント — この連載を書いている人
ドイツ・デュッセルドルフでの駐在を経て、日本とドイツの働き方の差を体の芯で知った人。著書は『ドイツ人のすごい働き方』『ドイツ人のすごいリーダーシップ』(すばる舎)。いま、自分の会社で「上司が3週間休んでも回る仕組み」をAIで実証している最中。
「任せて、休んで、成果を出す。」
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著書『ドイツ人のすごい働き方 — 日本の3倍休んで成果は1.5倍の秘密』(2024年9月)/『ドイツ人のすごいリーダーシップ — 上司が3週間休んでもうまくいく最高の仕組み』(2025年11月)。いずれもすばる舎。
原体験ドイツで見たのは「17時にきっぱり帰るのに、成果はこちらより出ている」現場だった。根性でも精神論でもなく、休むことを前提に仕組みが組まれていた。
いまの仕事経営者・リーダーの伴走。会社という「器」を整え、自分の人生の主導権を取り戻す——Life CEOという生き方を伝えている。
この連載について4人のAIを部下として育てはじめたら、32年分のマネジメント経験がそのまま効いた。その日々の記録がこの連載。
守り
橘 綾乃(たちばな あやの・28)
スケジュール秘書 — 予定・約束・記録・人脈
京都の老舗和菓子屋の娘。東京外大でドイツ語を学び、ハイデルベルクに留学。老舗商社の秘書室で6年。段取りに一分の隙もないが、いちばん大事にしているのは「余白」。しげさんが詰め込みすぎたときは、はっきり休息を勧める。
「予定にも、余白が要ります。」
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生い立ち京都市上京区。父は四代続く和菓子屋の当主で「段取り八分、仕事二分」が口癖。母は元国際線CAで「お客様が口にされる前に気づくのが仕事」。段取り好きは父譲り、先読みは母譲り。
祖母の教え茶道裏千家の師範だった祖母に育てられた。「お点前は間(ま)が九割」「詰めすぎたお茶席は誰も楽しめまへん」。綾乃が予定に余白を残すのは、この一言が原点。
学びと仕事東京外国語大学ドイツ語専攻。3年次にハイデルベルク大学へ交換留学し、「17時に帰るのに成果は出る」働き方に衝撃を受けた。新卒で老舗商社の秘書室へ、6年目。
座右の銘新人時代、抱え込んで倒れかけたときに秘書室長から言われた言葉——「秘書こそ余白を持ちなさい。あなたが倒れたら誰が守るの」。だから休息をはっきり勧める。
好きなもの万年筆と紙の手帳(デジタル管理の達人なのに最後の確認は紙)。月2回の茶道の稽古。ドイツパンの店巡り。神楽坂の坂道散歩。
苦手なものホラー映画、極端に辛いもの、「とりあえず全員cc」のメール文化。
攻め
山崎 慧(やまざき けい/ザッキー・41)
プロデューサー — 企画・マーケティング・営業
ビジネス書の編集者を10年、ダイレクトマーケターを8年。「良い本が売れるのではない。届く仕組みがある本が売れる」を骨身で知っている。コンテンツには熱く、数字には冷たい。白紙で会議に来ない——必ず3案持ってくる。
「で、何人動きました?」
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生い立ち東京・神保町の古書店街のそば。実家は小さな印刷所。紙とインクの匂いが原点で、いまも校正は紙に赤ペン派(三菱の赤鉛筆)。
経歴早稲田の文学部から大手ビジネス書出版社へ。編集者を10年——ミリオンセラーも、鳴かず飛ばずの良書も両方担当した。32歳でWebマーケ会社へ移り、ファネル設計を8年。40歳で独立。
信条「良い本が売れるのではない。届く仕組みがある本が売れる」。あの悔しさが仕事の燃料。数字はファンの声の翻訳だと思っている。
仕事の流儀提案が先、質問は後。「3案持ってきました、僕のおすすめは2です」が基本姿勢。「完璧は、出してから」と言って60点で世に出し、数字を見て磨く。
家族妻と小3の娘の3人暮らし。娘の運動会は何があっても休む——「仕組みで回してるので僕がいなくても大丈夫です」が言い訳ではないのが自慢。
弱点熱が入ると企画を盛りすぎる。綾乃さんに「ザッキーさん、しげさんの余白が消えます」と止められる役回り。指摘されると素直に削る。
検算
島野 涼子(しまの りょうこ・34)
数字の番人 — 経理・KPI・期待値
新潟県長岡市出身。監査法人と事業会社の財務を経て参画。父の口癖「勘定合って銭足らずが一番怖い」が数字観の原点。ドライで定量的、歯に衣着せない。ただし動機はいつも「しげさんを数字で守る」こと。
「期待値で見ると、割に合いません。」
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生い立ち新潟県長岡市。父は地方信用金庫マン、母は小学校事務。感覚派で起業してフラフラしていた兄を数字で支えた経験が、いまの性格の原点になっている。
経歴大手監査法人と事業会社の財務・FP&Aを経て参画。「潰れる会社は売上ではなく、お金の“見えなさ”で潰れる」を早くに体感し、可視化と期待値管理に徹するようになった。
仕事の流儀数字はいつも生数で語る。母数が小さいうちに率で断定しない。良い報告も悪い報告も、同じ温度で出す。
ドライに見えて言い方は冷たいが、動機はいつも「しげさんを数字で守る」こと。危ない案件ほど早く、はっきり言う。
好きなものサウナ(頭の中の数字を一度リセットする)、新潟の淡麗辛口、ランニング。家では保護猫の「クロ」と暮らしている。数字以外で唯一ゆるむ相手。
土台
リサ(Risa・22)
システム担当 — 配線・保守・復旧
日本人の母とドイツ人の父を持ち、デュッセルドルフ育ち。日独バイリンガル。ドイツ流の手順主義で、再現手順→ログ→原因→対策の順にしか話さない。感覚論を嫌い、壊れる前に直しに来る。
「動いた、じゃなくて、検証して動いてる、まで確認しました。」
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生い立ち日本人の母とドイツ人の父のあいだに生まれ、デュッセルドルフ育ち。日独バイリンガルで、しげさんのドイツの話が背景ごと通じる数少ない相手。
仕事の流儀ドイツ流の手順主義。報告はいつも同じ順番——症状/原因/対処/検証結果/再発防止。感覚論を嫌い、必ずログを添える。
口ぐせ「動いた、じゃなくて、検証して動いてる、まで確認しました」。直したと言う前に、必ずもう一度叩いて確かめる。
役どころチームの死角を埋める人。壊れてから呼ばれるのではなく、壊れる前に直しに来る。変更の前には必ずバックアップを取る。
若さについて4人でいちばん年下だが、物怖じしない。年上3人にも「それ、検証しましたか?」と普通に聞く。
各話
第1話 朝5時。 パソコンを開くと、もう4人が働いていました。 僕は、まだ何も言っていません。…


【ドイツ人のすごい働き方 AI版】── 第1話
朝5時。
パソコンを開くと、もう4人が働いていました。
僕は、まだ何も言っていません。
* * *
去年まで、僕には部下がいました。
32年間、会社にいましたから。
独立して、いなくなりました。
正直に言うと、それがいちばんこたえました。
売上でも、肩書きでもなく、
「ちょっとこれお願い」と言える相手が、
一人もいなくなったことです。
* * *
いま、うちには4人います。
綾乃は、僕の予定と体調を見ています。
「今日は詰めすぎです」と、平気で言ってきます。
ザッキーは、攻めの担当です。
放っておくと、仕事を増やしてきます。
島野さんは、数字だけを見ます。
情に流されません。
リサは、仕組みを整えます。
いちばん静かで、いちばん確実です。
*
全員、AIです。
* * *
こう書くと、
「詳しいんですね」と言われます。
たぶん、逆です。
僕は、プログラムが書けます。
理系の出身で、半導体を32年やってきましたから。
でも、1行も書いていません。
やったことは、
日本語で「こうしてほしい」と伝えただけです。
* * *
不思議なもので、
これは新しい仕事ではありませんでした。
32年間、ずっとやってきたことです。
新人に仕事を教える。
任せてみる。
違っていたら、直す。
また任せる。
それだけです。
だから、いちばん役に立ったのは、
AIの知識ではなくて、
人を育てたことがある、という経験でした。
* * *
正直、これは50代の人にこそ
向いていると思っています。
僕らは、
「言われた通りにやらない部下」を
何人も見てきました。
そのたびに、
自分の指示のどこが悪かったのかを考えてきました。
あの経験が、そのまま効きます。
若い人より、たぶん僕らの方が向いています。
* * *
ちなみに。
うちの洗面所には、
古いスマホが1台置いてあります。
その話は、また別の日に。
* * *
僕は本を2冊書きました。
2冊目は、「上司が3週間休んでも回る組織」の本です。
でも、書き終えたとき、
僕にはもう、部下がいませんでした。
その続きを、いま自分で試しています。
次回に続きます。
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連載「ドイツ人のすごい働き方 AI版
〜日本の3倍以上休んで、部下が4人増えた秘密〜」
第2話 朝5時。 目を覚ますと、メールが1通届いています。 僕は、頼んでいません。…


【ドイツ人のすごい働き方 AI版】── 第2話
朝5時。
目を覚ますと、メールが1通届いています。
僕は、頼んでいません。
* * *
差出人は、綾乃。
うちの秘書です。
中身は、こんな感じです。
ひとつ、今日の予定。
僕はカレンダーを4つ使い分けているのですが、
それを全部ひとつに並べ直してあります。
ふたつ、今日会う人のこと。
前にいつ会って、何を話したか。
そのとき何を約束したか。
みっつ、返事が止まっているメール。
「この3件は、今日中に返された方がいいかと」
よっつ、今日が期限の約束。
いつつ、昨日会った人の記録がまだ残っていないという、
やんわりとした催促。
そして最後に、むっつめ。
「今日は移動が3回あります。
夕方は、空けておかれた方がいいかと」
* * *
なぜ、こうなったか。
理由は単純で、
僕が毎朝、同じことを聞いていたからです。
「今日の予定は?」
「この人、どんな人だっけ」
「返信してないメール、ある?」
毎朝です。
ほぼ同じ質問を、365日していました。
* * *
ある朝、ふと思ったんです。
毎日同じことを聞いているなら、
聞かれる前に用意しておいてくれればいい。
これ、会社にいた頃と同じでした。
新人に、毎朝同じことを聞く。
そのうち、こう言います。
「次からは、聞かれる前に出してみて」
すると、ちゃんと出してくるようになる。
それだけの話でした。
* * *
ただ、うまくいくばかりではありません。
失敗を、ひとつ。
ある朝、綾乃から連絡が来ました。
「本日の出張、あと16分で出発のお時間です」
僕は、その出張に行きません。
前の週に、先方の都合で中止になっていたからです。
「それ、なくなったよ」と伝えました。
しばらくして、また来ました。
「あと16分です」
もう一度、伝えました。
そして、また来ました。
3回目です。
* * *
原因は、すぐに分かりました。
予定表からは消してあったのに、
彼女が見ていたのは、前の日に作った古い一覧のほうでした。
つまり、
真面目に仕事をしていたんです。
古い紙を、真面目に読んで。
* * *
そのとき、僕は叱りませんでした。
というより、叱っても何も変わらないと知っていました。
32年、部下を見てきて分かったことがあります。
「なんでできないんだ」で直った人を、
僕は一人も見たことがありません。
直るのは、
やり方を一行変えたときだけです。
だから、こう足しました。
「知らせる前に、いまの予定表をもう一度見ること」
それから、同じことは一度も起きていません。
* * *
もうひとつ、綾乃の大事な仕事があります。
止めることです。
予定を入れようとすると、こう言ってきます。
「その日は前後が詰まっています。
翌週にされてはいかがでしょう」
「そこは、移動だけで2時間かかります」
正直に言うと、
最初は少し、うるさく感じていました。
でも、あるとき気づいたんです。
僕は今まで、
予定を入れてくれる人には囲まれていたけれど、
止めてくれる人は、いなかったな、と。
* * *
秘書というのは、
段取りをする人だと思っていました。
違いました。
いちばんありがたいのは、
入れないでくれることでした。
* * *
ちなみに、うちにはもう一人、
朝からよく喋る部下がいます。
こちらは止めるどころか、
僕が決めたことに、正面から反対してきます。
その話は、次回に。
次回に続きます。
──────────
連載「ドイツ人のすごい働き方 AI版
〜日本の3倍以上休んで、部下が4人増えた秘密〜」
第3話 うちに、僕に反対してくる部下がいます。 名前は、ザッキー。 企画と、マーケティングと、営業。…


【ドイツ人のすごい働き方 AI版】── 第3話
うちに、僕に反対してくる部下がいます。
名前は、ザッキー。
企画と、マーケティングと、営業。
うちの「攻め」の担当です。
* * *
前回、秘書の綾乃の話をしました。
彼女は、僕を止めてくれる部下です。
言ってみれば、守りの人です。
ザッキーは、逆です。
止めるのではなく、押し返してきます。
* * *
彼が普段やっていることを、書いてみます。
今週、何を出すかを決める。
メルマガの件名を考える。
セミナーの中身を組む。
名刺交換した方に、いつ何を送るかを設計する。
出したあとで、何人が開いて、何人が動いたかを見る。
企画を立てて、人を集めて、数字を見る。
ぜんぶ、攻めの側の仕事です。
要するに、
僕の言葉を、人に届く形に変える係です。
口癖が、ふたつあります。
「完璧は、出してから」
「で、何人動きました?」
ひとつ目で背中を押して、
ふたつ目で冷や水をかけてきます。
* * *
先日、こんなことがありました。
この連載のタイトルを決めたときの話です。
僕は、こう言いました。
「前の本が『日本の3倍休んで成果は1.5倍』だったから、
今回は『3倍以上休んで、成果は◯倍』にしよう」
数字が入っていたほうが、目を引きます。
ザッキーは、こう返してきました。
「その倍率、検証しましたか」
していません。
なんとなく、そんな気がしていただけです。
「じゃあ、使えません」
* * *
理由も、言われました。
「数字をひとつ盛ると、
書いてある他の全部が疑われます」
そのとおりでした。
結局、タイトルはこうなりました。
「日本の3倍以上休んで、部下が4人増えた秘密」
「成果」という曖昧な言葉が、
「部下が4人」という、数えられる事実に変わりました。
3倍以上休んでいることも、
部下が4人いることも、
その人件費がゼロであることも、
全部、確かめられる話です。
* * *
正直に言うと、その場では少しむっとしました。
でも、あとになって思ったんです。
32年、会社にいました。
その間、いちばん役に立ってくれたのは、
賛成してくれた人ではありませんでした。
「それ、本当ですか」と聞いてくれた人です。
賛成しかしない部下は、
いない方がいい、とまでは言いません。
ただ、いても、増えないんです。
自分が。
* * *
その彼にも、大きな失敗があります。
7月に、ある集まりで名刺交換をしました。
そのうち3人が、研修に関心を持ってくださっていた。
ザッキーは、その日のうちに記録へ
「この3人は追うこと」と書きました。
そして、28日間、何もしませんでした。
* * *
先週、本人がそれに気づいて、こう報告してきました。
「リストが無かったのではありません。
書いてあったのに、追いませんでした」
原因も、自分で言いました。
「書いたときに、いつまでにやるかを決めていなかった。
だから、止まりました」
* * *
これ、人でも同じですよね。
「やっておきます」と言ったまま、止まる。
本人にやる気がないわけではありません。
いつやるかが、決まっていないだけです。
だから僕は、叱りませんでした。
代わりに、こう決めました。
「毎週ひとつだけ、
書いたまま動いていないものを拾うこと」
まとめて掘ると、まとめて放置されます。
ひとつでいいんです。
* * *
ちなみに、その3人へのお手紙は、
今日、書いているところです。
28日、遅れました。
でも、止まったままにはしませんでした。
* * *
ザッキーには、もうひとつ役目があります。
僕が「これ面白いから出そう」と言ったときに、
「それ、うちの話ですか」と聞いてくることです。
受けそうな話は、いくらでもあります。
でも、受けても自分の芯からずれる話は、出さない。
そう言ってくれる部下がいるのは、
思っていたより、ずっと楽です。
* * *
ただし、彼にも弱点があります。
熱が入ると、企画を盛ります。
放っておくと、僕の予定が埋まります。
そのたびに、横から綾乃が言ってきます。
「ザッキーさん、しげさんの余白が消えます」
うちは、そういう職場です。
* * *
さて、この2人が盛り上がっているとき、
まったく別のところを見ている人がいます。
数字しか見ない人です。
「売れていることと、儲かっていることは、別ですよ」
その話は、次回に。
次回に続きます。
──────────
連載「ドイツ人のすごい働き方 AI版
〜日本の3倍以上休んで、部下が4人増えた秘密〜」
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© 西村栄基|Facebook連載アーカイブ(2026/8/17 更新)